震災後、再生可能エネルギーへの注目が集まる中、次に手がけることになったのが、冒頭で話した別府の温泉発電所です。
別府の温泉の井戸からは熱水が勢いよく吹き出ており、そのままでは、温泉には使えないので、それを石などにぶつけて減衰させているとのこと。つまり、わざわざ大量のエネルギーを捨てて温泉として利用しているわけです。
これはもったいないということで、この勢いよく吹き出る熱水蒸気でタービンを回して発電しようというのが林社長のアイデアです。二相流のタービンの設計というのは非常に難しいらしいのですが(木村さんが後で説明してくれました)、かつて地獄谷で熱水蒸気タービンを設計した経験もあり、開発に成功したということです。3月5日から6日に3キロワットの実験機が設置されるそうです。
技術的なことは詳しくわからないのですが、この設備では、まず熱水蒸気タービンを回して、その後、残った蒸気で蒸気タービンを回し、熱水は温泉に利用します。一種の、コジェネレーション、コンバインドサイクルといえるでしょうか。
遠心タービン |
最終的なタービンは200kw規模のものを想定しており、仮に今年始まる全量固定価格買い取り制度で、20円以上の買い取り価格となれば、1億円以内にコストを抑えれば十分に採算があうといいます。
少し計算してみますと、200kwの発電設備が仮に90%稼働したとしますと、年間およそ160万kwhの電力を発電します。これを1kwhあたり20円で売却すれば年間3,200万円となります(林社長は3800万円と言っていましたので、おそらく20円以上を想定しているのだと思います)。
井戸は既にありますので1億円というのは工事費を含めた全ての初期コストです。この初期コストはおよそ3年で回収できます。林社長はこのくらいでないと民間にはとても売れないといいますが、従来の発電設備と比較すると、とてつもない経済性の高さです。もし30年の回収期間を想定すると、発電単価は、2円/kwh程度になります。20年でも3円/kwh程度です。
もちろん管理コストがかかってきますが、必要な人件費は、電気主任技術者プラス数名程度であって、これも常勤で雇用する必要はないかもしれません。その他のメンテナンスコストなどを考えたとしても、火力や原発より安いと思われます。太陽光など全く話になりません。
林社長が3年の回収期間を想定するのは、企業の工場廃熱からのエネルギー回収向け設備の納入経験から来ているそうです。また、民間が銀行から借り入れをして発電所をつくるとなると3−5年の回収モデルが描けなければ実現性がありません。民間相手の真っ当な感覚からすると、電力企業の事業は甘いと言わざるを得ません。
現状温泉発電を持てるのは温泉旅館や温泉配湯業者といった民間ですから、回収期間の長い投資は難しいと思います。ただ将来的には温泉の権利と温泉発電の開発をうまく分離して、ファイナンスの仕組みを工夫できれば、もっと普及するのではないかと思います。
ターボブレードは、現在、タービン設計だけでなく、深海底ドリリング計画ターボドリルの開発などを手がけ、事業範囲を拡大しています。大正やオイルショック期の水力タービンブームがすぐに消え去ったという経験からして、現在の再生可能エネルギーブームが今後もずっと続くとは思っていないからです。
国家プロジェクト |
今回のインタビューから、そうした点からの地熱発電の可能性に対して、ますます確信をもつようになりました。
ブログでは詳細は書けない部分もありますが、その内、きちんとレポートします。