2014年1月30日木曜日

magicc シンポジウム2014  ◆◆終了しました◆◆

magiccシンポジウム2014

―環境/エネルギー/経済発展の両立に向けて―





一橋大学イノベーション研究センターでは、内閣府「最先端・次世代研究開発支援プログラム」支援のもと、「Micro-analysis on Green Innovation and Corporate Competitiveness:magicc(環境、エネルギー、産業競争力の両立に向けて)」プロジェクト(主幹:IIR教授青島矢一)を立ち上げ、環境/エネルギー問題の解決と経済発展を実現するためのグリーンイノベーションの探求、産業や国の競争力と政策の分析を続けています。そして、2月7-8日、その第2回目となるシンポジウムを、神田一橋記念講堂にて開催いたします。


    日時:2014年2月7−8日   
        ★★8日は予定通りの開催といたします★★
    場所:一橋記念講堂 
      (東京都千代田区一ツ橋2-1-2 学術総合センター2階)
         https://www.jamstec.go.jp/es/jp/ss09/map.pdf 

    主催:一橋大学イノベーション研究センター
        内閣府「最先端・次世代研究開発支援プログラム」
      

【第1日目】 2/7(金) 開場9:30 中会議場

「水、太陽、地熱の活用」 


9:45-10:00 主催者挨拶 
 青島矢一
《一橋大学 イノベーション研究センター  教授/magicc主幹》


10:00-12:00 日本における地熱発電の可能性 中会議場
○パネラー報告
 金子正彦 氏 「地熱エネルギーの意義と開発への課題」
  《西日本技術開発株式会社 取締役 東京事務所長》
 岡本繁樹 氏 「地熱資源開発の現状」
  《経済産業省資源エネルギー庁 資源・燃料部 燃料政策企画室  室長》
 水野瑛己 氏 「海外の地熱政策と日本への示唆:
           独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構 委託
           地熱発電開発促進に向けた
           諸外国の普及促進制度等調査業務から」
  《有限責任監査法人トーマツEnterprise Risk Service  マネジャー》
 窪田ひろみ 氏 「地熱発電開発の地域合意形成における現状と課題」
  《一般財団法人電力中央研究所 環境科学研究所 主任研究員》
 青島矢一  「小規模地熱発電の可能性」 ※兼チェア
  《一橋大学イノベーション研究センター 教授》


13:00-13:40 基調講演① 中会議場
 水谷重夫 氏 水ing株式会社 代表取締役社長》
  「水事業における国内外の官民連携の現状について」


13:40-15:20 水需要の増大と水処理産業の競争力 中会議場
○パネラー報告
 池田健一 氏 「逆浸透膜技術の開発競争と発展過程」
  《公益財団法人地球環境産業技術研究機構 主任研究員》
 藤原雅俊 氏 「水不足をどう商機につなげるか―水処理膜からの知見」
  《 一橋大学大学院商学研究科 准教授》
 三木朋乃 氏 「RO膜市場の現状と日本企業の競争力」
  《立教大学経営学部 助教》
 積田淳史 氏 「水ビジネスの未来 脱短期志向の必要性」
  《武蔵野大学政治経済学部 講師》
 チェア: 青島矢一
  《一橋大学イノベーション研究センター 教授》


15:30-17:30 太陽電池産業の発展と競争 中会議場
○パネラー報告
 栗谷川悟 氏 「太陽光発電の可能性と
           ソーラーフロンティアのイノベーション」
  《ソーラーフロンティア株式会社 取締役 専務執行役員》
 松本陽一 氏 「太陽電池は「技術力で勝って事業で負けた」のか?
           ―IEEEPVSC学会発表の分析―」
  《神戸大学経済経営研究所 准教授》
 朝野賢司 氏 「FITによるPV急増 
           苦心した欧州の制度対応と日本の課題」
  《一般財団法人電力中央研究所 社会経済研究所 主任研究員》
 青島矢一 「中国太陽電池企業の競争の仕組み」 ※兼チェア
  《一橋大学イノベーション研究センター 教授》



【第2日目】2/8(土)開場 9:45 一橋記念講堂

グリーンイノベーション:動向と政策課題」


10:00-10:40 基調講演② 一橋記念講堂
 藤原洋 氏 《株式会社インターネット総合研究所 代表取締役所長》
  「東京オリンピック/パラリンピックと 日本の環境エネルギー産業の                   展望」
  
             
10:40-12:30 需要サイドのイノベーション 一橋記念講堂
○パネラー報告
 宮原智彦 氏 「Fujisawa SSTにおける くらし起点のイノベーションの取組」
  《パナソニック エコソリューションズ社 事業開発センター GM》
 竹内幹夫 氏 「クローラー電動モビリティ『UNIMO&UNIBO』で
           安全・安心ライフを!」
  《株式会社ナノオプトニクス・エナジー   代表取締役社長》
 渡邊弘明 氏 「私たちをとりまく水事情と さらに進むトイレの節水技術」
  《株式会社LIXIL プロダクツカンパニー 
   トイレ・洗面GBU トイレ開発部 トイレデバイス開発G GL)
 奥山佳成 氏 「自動販売機の革新」
  《株式会社コカ・コーラ東京研究開発センター 
   販売機器開発・プロセスリサーチ ディレクター
 チェア: 米倉誠一郎 
  《一橋大学イノベーション研究センター 教授》
  

13:30-14:30 基調講演③ 一橋記念講堂
 村上憲郎 氏 《村上憲郎事務所 代表取締役》
  「スマートグリッドが切り拓くICTの新地平」


14:30-16:30 日本のエネルギーのあり方 一橋記念講堂

○パネラー報告
 金子祥三 氏 「日本のエネルギーを考える基本的条件」
  《東京大学生産技術研究所  特任教授》
 鈴木悌介 氏 「エネルギーから経済を考える」 ※大雪のため鈴木氏欠席
  《エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議   世話役代表
   鈴廣かまぼこグループ  代表取締役副社長》  
 村上敬亮 氏 「再生可能エネルギーの普及に向けた現状と課題」
  《経済産業省資源エネルギー庁 新エネルギー対策課長)
 竹内純子 氏 「世界の中で考える日本のエネルギー政策」
  《NPO法人国際環境経済研究所 理事・主席研究員
 橘川武郎 氏 「環境・エネルギー・経済発展の両立に向けて
           :日本のエネルギーのあり方」
  《一橋大学大学院商学研究科 教授》
チェア: 米倉誠一郎  青島矢一
  《一橋大学イノベーション研究センター 教授》 



【シンポジウム申込みフォーム】  受付終了
 
  問い合わせ先: magiccプロジェクト事務局  藤井由紀子
    一橋大学 イノベーション研究センター内
      〒186-8603 東京都国立市中2-1
      TEL.042-580-8434
      FAX.042-580-8410
      yukifuji@iir.hit-u.ac.jp






【ケーススタディ】東洋紡:逆浸透膜の開発と事業展開


magiccでは、火力発電・鉄鋼・ものづくりなどの既存産業分野、太陽光・水資源・地熱・スマートグリッドといった新産業分野、それぞれの分野における日本企業のグリーンイノベーションへの取り組みについて、インタビューや施設見学などの実地調査を通して分析を進め、それらをケーススタディとしてまとめて、「リサーチライブラリ」で公開しています。

東洋紡㈱の逆浸透膜のケーススタディを新たにアップしました。
 藤原雅俊・青島矢一「東洋紡:逆浸透膜の開発と事業展開」
  (IIRケース・スタディCASE#14-01、2014年1月)

★★ 東洋紡㈱のケーススタディは「リサーチ・ライブラリ」からダウンロードできます ★★
       ↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら  (ケーススタディの項目をご参照ください)


増え続ける人口に対応して、世界では水需要が急速に拡大している。それに伴い、世界の水ビジネスは、2030年に100兆円規模にまで拡大すると予測されている(OECD報告)。上下水道処理、海水淡水化、工業用排水処理、産業用超純水製造など、水ビジネスは多岐にわたっているが、海水淡水化のような高度な水処理において鍵となる製品が逆浸透膜(RO膜)と呼ばれる分離膜である。

RO膜は、その形状に応じて平膜型(スパイラル型)と中空糸型(ホローファイバー型)に分けられる。平膜型はシート状の膜をパイプに巻き付けて作られるのに対し、中空糸型は中空の細糸を詰めて作られる。現状、世界の主流は平膜型である。RO膜市場を支配しているダウ・ケミカル(2011年世界市場シェア:32.1%)、日東電工(同:28.1%)、東レ(同:27.5%)の3社を始め、他社はみな平膜型を採用している。現状で中空糸型を採用しているのは東洋紡ただ一社であり、その世界市場シェアは、2011年時点で7.8%となっている 。
  

東洋紡のRO膜は、素材の点でも他社と異なっている。他社がポリアミド系素材を使用しているのに対し、東洋紡が使用しているのは三酢酸セルロースである。RO膜開発の歴史で最初に工業化されたのは酢酸セルロースを素材としたものである。しかし、その後、多くの企業が、脱塩率と透過率の高いポリアミド系へと素材を変更した。酢酸セルロースは汎用素材であり、他社との差別化が難しいことも変更の理由であった。このように、他社がみなポリアミド系の平膜へと事業の方向性を転換するなか、東洋紡だけが、酢酸セルロースの中空糸型での事業を継続して、現在に至っている。


東洋紡は、長期の実績を持つ素材の特性を生かす素材にとどまり独自路線を歩んでいるのだが、必ずしも市場で劣勢に立たされているわけではない。同社は、自社製品と相性の良い中東地域に照準を定め、集中的に製品を展開することによって、競争優位を築き上げている。世界市場全体からみれば、東洋紡が定める地理的なターゲットは確かに狭い。しかし中東、とくにG.C.C(Gulf Cooperation Council:湾岸協力理事会)は深刻な渇水に悩む地域であり、造水需要が伸びている。この地域で、東洋紡はおよそ50%の市場シェアを獲得している 。こうした東洋紡の行動は、自社製品に適合する市場セグメントに特化し、他社との競争を回避しながら競争優位を構築するという競争戦略の定石ともいえる。

本ケース・スタディでは、東洋紡が三酢酸セルロース中空糸型のRO膜に焦点を定めて開発と事業展開を継続し、中東地域における競争優位を構築してきた経緯を記述している。

2014年1月15日水曜日

【研究会報告】温泉地における自前の地熱発電について



CO2削減とイノベーション」研究会
  第22回研究会報告  2013.9.20


「温泉地における自前の地熱発電について

 田中大生 氏 
 (㈱ジオサービス 代表取締役)




東日本大震災以後、再生可能エネルギーへの注目は高まったが、地熱発電の場合、温泉枯渇を恐れる地元の反対は依然として強く、なかなか前には進んでいない。ところが、30年も前から、温泉の飽和蒸気に着目し、小規模分散という形で浴用との共生を図る、“日本型地熱発電”を提唱してきた人物がいる。㈱ジオサービスの田中大生氏である。そこで、今回の研究会では、田中氏をお招きし、これまでの取組みについてお話をうかがったほか、「固定価格買取制度(FIT)によって42円/kW(税別)という高い調達価格がついた好機をどう活かすのか」をテーマに、現状と課題についても語っていただいた。


★★ 講演録として、より詳しい内容を「リサーチ・ライブラリ」にて公開しています ★★
   ↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら  (研究会・講義録項からダウンロードください)
        
                 

【講演要旨】

日本は古くからの温泉大国であり、温泉は再生可能エネルギーとして十分利用価値があるにもかかわらず、その多くは浴用利用の範囲にとどまっている。ただし、温泉地に大規模な地熱発電所を作るとなると、開発は大掛かりでリードタイムも長く、何より地元の反対を引き起こす。それに対して、温泉井戸から出る比較的低温の飽和蒸気を使い、タービンを回して発電すれば、効率もよく、コストを抑えられるほか、浴用利用を侵すこともないため、地元の同意を得ることはさほど難しくない。温泉蒸気を使った小規模な発電所を各地に分散して作っていくこと。これこそが“日本型地熱発電”の目指すべきところであり、こうした方向性でなければ日本では地熱発電は展開していかない。

実のところ、温泉地における小規模分散型発電の試みは30年前に遡る。国産第1号の地熱発電所として認可された別府Sホテル(1981年)がその端緒であり、事業受託の形で稼働させたKホテル(1998年)を経て、現在は地域住民が共同出資して事業を進める小国わいた温泉「わいた会」の発電所立ち上げに携わり、来年春の運転開始を目指している。

この間、普及活動に努める過程では、まだ安価だった石油を用いた火力発電に対抗できず冬の時代を強いられたこと、地熱発電がRPS 法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)の対象外となり売電ができないなどのことを経験したが、各地で必要性を説いて歩く一方、現行法に合わせて発電方式を工夫する努力を重ねて今日に至っている。昨今ではCO2削減への関心に加えて、全量を買い取る固定価格買取制度(FIT)の追風もあり、この好機のもと、実証例を1つでも多く増やして将来につなげたい、と考えている。


しかし、真に温泉発電を普及させるためには、発電所を持続性の高い形のものにしていく必要がある。それには、地熱法の整備、環境保護地区への設置認可、電力会社系統へ連系問題、発電設備のさらなる簡易化、売電収益の配分・使途など、行政側だけでなく、事業者側で解決すべき課題も山積している。一部については既に展望が開けており、また買取期間が15年と定められてはいるが、42円という高い調達価格がもたらす売電収益によって解決が見込まれるものも少なくない。まずは実証例を増やし、課題も含めて、今後も普及に取組む所存である。


(文責:藤井由紀子)