「CO2削減とイノベーション」研究会
第22回研究会報告 2013.9.20
田中大生 氏
(㈱ジオサービス 代表取締役)
「CO2削減とイノベーション」研究会
(㈱ジオサービス 代表取締役)
東日本大震災以後、再生可能エネルギーへの注目は高まったが、地熱発電の場合、温泉枯渇を恐れる地元の反対は依然として強く、なかなか前には進んでいない。ところが、30年も前から、温泉の飽和蒸気に着目し、小規模分散という形で浴用との共生を図る、“日本型地熱発電”を提唱してきた人物がいる。㈱ジオサービスの田中大生氏である。そこで、今回の研究会では、田中氏をお招きし、これまでの取組みについてお話をうかがったほか、「固定価格買取制度(FIT)によって42円/kW(税別)という高い調達価格がついた好機をどう活かすのか」をテーマに、現状と課題についても語っていただいた。
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日本は古くからの温泉大国であり、温泉は再生可能エネルギーとして十分利用価値があるにもかかわらず、その多くは浴用利用の範囲にとどまっている。ただし、温泉地に大規模な地熱発電所を作るとなると、開発は大掛かりでリードタイムも長く、何より地元の反対を引き起こす。それに対して、温泉井戸から出る比較的低温の飽和蒸気を使い、タービンを回して発電すれば、効率もよく、コストを抑えられるほか、浴用利用を侵すこともないため、地元の同意を得ることはさほど難しくない。温泉蒸気を使った小規模な発電所を各地に分散して作っていくこと。これこそが“日本型地熱発電”の目指すべきところであり、こうした方向性でなければ日本では地熱発電は展開していかない。
実のところ、温泉地における小規模分散型発電の試みは30年前に遡る。国産第1号の地熱発電所として認可された別府Sホテル(1981年)がその端緒であり、事業受託の形で稼働させたKホテル(1998年)を経て、現在は地域住民が共同出資して事業を進める小国わいた温泉「わいた会」の発電所立ち上げに携わり、来年春の運転開始を目指している。
この間、普及活動に努める過程では、まだ安価だった石油を用いた火力発電に対抗できず冬の時代を強いられたこと、地熱発電がRPS 法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法)の対象外となり売電ができないなどのことを経験したが、各地で必要性を説いて歩く一方、現行法に合わせて発電方式を工夫する努力を重ねて今日に至っている。昨今ではCO2削減への関心に加えて、全量を買い取る固定価格買取制度(FIT)の追風もあり、この好機のもと、実証例を1つでも多く増やして将来につなげたい、と考えている。
しかし、真に温泉発電を普及させるためには、発電所を持続性の高い形のものにしていく必要がある。それには、地熱法の整備、環境保護地区への設置認可、電力会社系統へ連系問題、発電設備のさらなる簡易化、売電収益の配分・使途など、行政側だけでなく、事業者側で解決すべき課題も山積している。一部については既に展望が開けており、また買取期間が15年と定められてはいるが、42円という高い調達価格がもたらす売電収益によって解決が見込まれるものも少なくない。まずは実証例を増やし、課題も含めて、今後も普及に取組む所存である。
(文責:藤井由紀子)
(文責:藤井由紀子)