CO2削減イノベーション研究会で、ソーラーフロンティアの技術者の方の講演を聴きました。ソーラーフロンティアは昭和シェル石油の100%子会社で、CISという化合物型の太陽電池事業を展開している企業です。
CIS太陽電池モジュール |
現在、市場で主流の太陽電池は結晶シリコン型とよばれるもので、家庭向けでは90%くらいを占めています。しかし、結晶シリコン型の太陽電池の技術は汎用化しており、欧米のターンキーソリューション企業から製造装置を一式購入すれば、誰でも、すぐに、それなりのものをつくることができるようになっています。それゆえ、セルとモジュール事業は、激しい価格競争に陥っており、太陽電池セルの生産の60%近くは、既に中国企業によって占められています。
中国企業の低価格戦略によって世界中の太陽電池企業が苦境に陥っています。米国では倒産する企業が相次ぎ、ダンピング訴訟がおきています。日本企業も利益がでずに苦しんでいる企業がほとんどです。
こうした中、ソーラーフロンティアのCISは、非常に期待が持てる技術だと思いました。エネルギー変換効率においては、まだ結晶シリコン型に劣るものの、製造工程がシンプルで、発電能力の割には実際の発電量が多いのが特徴です。
政策もこうした日本の独自技術を後押しして欲しいものだと思います。今年度は全量固定価格買い取り制度が始まる予定です。急速な普及政策をすすめると、結局、中国製の安いパネルが大量に導入されて、日本企業が駆逐されてしまうのではないかと危惧しています。
エコポイント後の日本のTV企業と同じようなことにならないだろうかと、非常に心配になります。
国民の税金を大量に使って拡大する日本の市場には、できれば、日本の企業が製品もサービスも供給してほしいものです。日本の市場拡大が日本企業の競争力を後押しするように政策を考えるべきだと思います。日本企業が産業競争力を長期的に確保してはじめて大量に投入された税金が後々戻ってくるのですから。円高が続く中、当面日本は、先端技術力で勝負するしかありません。先端技術開発を後押しするような政策が必要だと思います。
今後急速な普及政策がとられたときには企業も独自性を維持するように工夫する必要があるでしょう。おそらくセルやモジュールコストでは当面中国企業に勝てないでしょうから、例えば、日本の気象環境や住宅事情に適合した製品を、施工技術を含めて提供するといったことが、必要になると思います。次世代技術が育つまで、なんとか、そうした工夫で市場を維持することが必要です。そうはいっても事業用発電に全量固定買い取りが適用され、高い買い取り価格が設定されてしまうと難しいかもしれません。
(青島矢一)