2012年9月11日火曜日

中国太陽電池産業の変化(1):競争環境とコスト構造


2012年8月6日

3月に続いてGSPVの王社長と愛多科技の孫社長にPV産業の状況について話を聞きました。5ヶ月も経っていないのに、かなり状況が変わっていました。この産業の動きは速いです。




シリコンインゴットとウェハ製造から始めた愛多科技は2011年にセルとモジュール生産に進出しましたが、最近はシステムまで手がけるようになりました。愛多科技のPV製品は全て発電所向けです。

PV産業の状況は厳しく、2011年から2012年で愛多科技の生産量はおおむね1/3に減少したそうです。特に大きな落ち込みを経験したのがセルとモジュールです。それと比較すれば、インゴットとウェハの製造はまだ安定しているとのことです。

現在、愛多科技のモジュールの生産量は月産で1.8MWです(従業員は3つの工場を合わせて300人だそうです)。最大手のサンテックパワーの2011年の年間販売量が2GWですから、1100といったところでしょうか。ちなみに王社長のGSPVの方はその半分の生産量だそうです。GSPVの製品は全て民生用です(従業員は150人)。

愛多科技の経営としては、現状、かなりきちんと管理して(コスト削減して)、やっとぎりぎり利益がでる程度だと言っていました。ワット単価は5元だそうです。日本円にして65円、kW換算で65000円です。サンテックで聞いたときにも、ワット単価は0.8ドルだと言っていましたので、ほぼ同じです。年末には4元/wになるといっていました。サンテックでは第3-4四半期は0.7ドル/wといっていました。この業界、横並びで、みな価格推移を共有しているようです。それにあわせてとにかく必死にコストダウンするという産業です。まさにコモディティ化しています。

3月時点から8月時点での価格の変化を少し細かく聞いた結果は以下のとおりです。


セルのワット単価:4.5元→3
(内)シリコンウェハ:2.5元→2
   その他の材料:1.5元+人件費/設備0.5元→あわせて1元

モジュールのワット単価:7元→5
(内)セル:4.5元→3
   材料:1.8元+設備:0.2元→合わせて:1.5
   人件費:0.5元→0.5

またシステム全体でのコスト(設置を含む)は、3月時点では12-16元/wでしたが、8月時点では10元/wということでした。1kWにして13万円です。これだけ安いのであれば、高い固定価格買い取りを決めた日本にどんどん売れそうな気がしますが、そうはなっていません。なぜ日本に輸出できないのかを王さんに聞いてみました。王さんの見解は以下の5つに集約できます(ただし、規制に関しては、家庭用PVに適用されるものであって、事業用PVに関しては別の理由があるはずです。)。

(1)   日本政府が保護しており、市場を開放していない。例えば、JETの認証が参入障壁となっている。JETの認証は他国の認証に比べて非常に厳しい。それに対応するにはコストがかさむ。
(2)   JPECの要件に対応するのも難しい。例えば、JPECでは、アフターサービスとして24時間の電話対応を要求している。さらに一定時間内にサービスがかけつけるという要求などがあり、非常に厳しい。
(3)   日本の企業(発電企業や施工企業)が太陽電池のプロでない。例えば全てJETの認証がないとだめだと思っているのではないか。
(4)   一般的に、他国に比べて品質要件が厳しい。防水性、防腐性など。
(5)   性能に関係ない品質まで厳しく要求してくる。例えば、外観の検査が厳しいことなど。

実際、王社長が指摘するように、家庭用太陽光発電の補助金申請においてはJ-PECの要件を満たすことが必要で、余剰買い取りの対象になるためには、JISの認証(それに準ずるJETの認証)が必要となっています。ただしこれらは10W以下のシステムに関する規定であって、10W以上に関しては規定が見当たりません。全量固定価格買い取りの対象となっているのは事業用のシステムなので、こうした規制が大きな参入障壁にはなっていないように思います。王社長も孫社長もこのあたり良く知らないようで、逆に「どうしたら日本に入れるのか」と聞かれました。参入障壁に関しては調べたいと思います。
(青島矢一)