2012年9月2日日曜日

中国太陽電池企業の競争:サンテックパワー訪問(3)(青島矢一)


2012年8月5日



中国の大手の太陽電池企業は、現在、どこも赤字という状況ですが、それらの中でもサンテックの業績の悪さが特に目立ちます。

最大の競争相手は英利(Yinli)です。英利は軍需関連企業で、その多角化事業として太陽電池を行っており、単一事業のサンテックと比べて豊富な資金力があることが強みです。ゆえに英利の価格攻勢に引っ張られる形でサンテックが苦境に立たされています。

競合他社に比べてサンテックの業績の落ち込みがひどいのは、製品コストが高いからだと思われます。サンテックの製品コストが高くなっているのには、2つの理由があるという説明でした。

1つは、シリコン材料(ウェハ)購入の長期契約が大きな負担となっています。シリコン材料が不足していた2007年頃は、この長期契約がサンテック飛躍の原動力となったわけですが(日本企業は材料を確保できず急速にシェアを落とした)、今では、それが重荷となっています。2011年には米国のMEMCとの長期購入契約を破棄するために1億2000万ドルを支払っています。

第2の理由は、他社より品質管理コストがかかっていることです。サンテックはとりわけ品質を重視しており、サプライチェーンの管理と生産管理を徹底しているとのことでした。25年の出力保証をしているのはその現れです。高品質がサンテックのブランド維持に貢献してきたわけですが、市場ではサンテックブランドをつけたまがい物が出回っており、困っていたそうです。最近、この件でサンテックは訴訟で勝利しています。

工場勤務の従業員の流動性は高いけれども、管理層に関しては自社株などのインセンティブがあるため定着する傾向にあるそうです。サンテックをやめて新しい会社をつくる人たちはいますが、すぐにサンテックと同じ品質を実現することはできないだろうという見解でした。

ただし、太陽電池がコモディディとなっていることは認識しており、ある一定の品質レベルであれば、誰でもできるようなっていることは確かだといっていました。インバーターやコントローラなどのその他部材(BOSBalance of System)についても、各省に生産企業が存在しており、国内で調達可能となっています。サンテックのモジュールの変換効率は、単結晶で17-18%、多結晶で16%ということでしたが、(品質問題を無視すれば)どこの企業でも同じような性能を出せます。サンテックも今は性能をあげることよりも、コスト削減に注力しています。

こうした状況ゆえに、多くの中小企業がこの産業に参入し、大企業も増産を行ったことが、現在の厳しい状況を招いています。

サンテックの輸出比率は80-90%です。その内訳は、欧州が50%、北米が20-25%、アジアが20-25%といったところです。ドイツにおける買い取り価格の低下などにより、欧州市場が縮小したことが、経営に直接的なダメージを与えています。米国と欧州のアンチダンピング課税が、さらに中国企業を追い込むことになりそうです。

現状は大変厳しい状況にありますが、サンテックでは、2014-2015年には市況が好転すると考えています。2015年にはおそらく供給不足になるのではないかといっていました。その根拠ははっきりしませんでしたが、日本を含めて、世界的に太陽電池の設置は増えていくと考えているようで、さらに、中国の政策にも期待していました。

中国では、2050年までの太陽光発電の設備容量の目標があり、それを達成するために、固定買取の価格を上げることを検討しているそうです。温家宝首相が、最近、江蘇省を訪れて、太陽光発電の支持政策を議論したとのことで、今後政策に反映される可能性が高いといっていました(希望もあるでしょうが)。

こうした期待からサンテックは拡大路線を考えているようですが、目下、資金調達が問題となっています。大量の短期負債を抱えているため、資金がショートする危険性があります。倒産するようなことななれば政府が救済するのかもしれませんが、米国に続いて欧州でもダンピング認定されるようなことになれば、本当に、危機的な状況に陥るのではないでしょうか。(青島矢一)