2012年3月30日金曜日

アイスランド地熱レポート(青島矢一)




昨年のアイスランドでの調査をもとにして立教大学の三木さんと書いた地熱発電のレポートを公開いたしました。

http://www.iir.hit-u.ac.jp/iir-w3/file/WP12-04AoshimaMiki.pdf

アイスランドの地熱発電のワット単価は、売価が3円/kwh程度ですので、おそらく日本円で2-3円/kwhくらいではないかと思います。原発も太刀打ちできません。地域暖房とか温水利用を重ねていることが一つの理由だと思われます。

日本は世界第3位の地熱資源の保有国ですから、環境や地域との調和を考えながら、積極的に活用する方向で考えるのがよいと個人的には思っています。

2012年3月27日火曜日

International Mini-Conference on Sustainable Growth and Asian Energy Policyで考えた既存技術と新技術の関係(清水洋)


International Mini-Conference on Sustainable Growth and Asian Energy Policyに出席しました。

最初の発表者は、東京大学の金子祥三先生です。
タイトルは、Japan’s Energy Policy after 3.11, 2011

震災後の政策変化
n  震災前は、CO2削減のために電力の3分の1を原子力でまかなう計画であった。しかし、震災後、これは現実的ではなくなり、原子力への依存度を減らす方向に大きく動いている。ただ、再生可能エネルギーへの依存度を急には高められない。

石炭火力発電の果たす役割
n  現在、日本の発電所で使用されるエネルギーの58%は、冷却などによりロスしている。この効率性を上げることは大切になる。ガスタービンとスチームタービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電は、高効率性という点で大きな可能性を持つ。
n  現在、川崎のコンバインドサイクル発電では、53%の効率性を達成している。つまり、エネルギーのロスが少ない。トリプルのコンバインドサイクル発電では、65%の高効率性の達成が見込まれる。
n  LNGはクリーンで良いのだが、タンカーで浦賀を通って東京に供給されている1日のLNGのリザーブは1週間分しかない。1週間、何らかの理由で供給がストップすると、LNGを使った発電は止まることになる。この点でも、石炭を使った火力発電の高効率性の果たす役割は大きい。

といった内容で、石炭火力発電の重要性がよく分かる発表で、大変勉強になりました。


この発表の中には、イノベーションという観点から様々な興味深いポイントがありました。
その中の1つが、既存技術と代替技術の間の競争とイノベーションです。

n  ネイザン・ローゼンバーグも言うように、新しい代替技術は、新しい技術内での競争があるばかりではなく、既存技術との間でも厳しい競争に直面します。多くの場合、新しい技術が誕生したばかりの時には、既存技術の累積的なイノベーションによる効率性の向上に、なかなか勝てません。
n  しかし、新しい技術の間だけでなく、既存技術との競争によって双方のイノベーションが促進されるわけです。
n  新しい技術へのトランジションをどのように行なっていくのかは、企業のマネジメントの観点だけでなく、国レベルの重要な政策課題でもあります。特に、アメリカと比べると、労働市場や資本市場の流動性がそれほど高くない日本では、技術の転換を組織の中で行なっていく必要性が高いのです。つまり、技術のトランジションのマネジメントがより重要だと言えます。
n  また、既存技術にとっては、新しい代替技術が支配的になった時に、どのように補完関係を構築していくかが重要なポイントとなります。石炭火力発電の場合も、現在果たしている役割と将来的にそれが果たす役割では変わってくるでしょう。将来的にはリニューアブル・エナジー技術に対して、どのような補完関係を築くのかは大きなイシューとなるはずです。この点に関しても、戦略的なマネジメントが大切になってきます。

(清水洋)

2012年3月24日土曜日

海水淡水化の産学間技術移転(藤原雅俊)


2012324日執筆

 少し前の話です。2010年に、海水淡水化技術の調査をしました。具体的には、東レさんにお世話になり、同社における逆浸透膜の開発過程を、青島矢一さん、三木朋乃さんと一緒に書きました(pdf)。とても面白い調査でした。

 逆浸透膜は、孔径1nmを下回る非常に小さな孔を持った半透膜です。圧力をかけて海水をこの特殊な半透膜に通すと、塩分やホウ素などが濾過されて淡水が得られるという、ざくっと言うとそういう仕組みです。この逆浸透膜の市場では、Dow Chemicalが首位をひた走っています。日東電工や東レ、東洋紡といった日本企業も健闘中です。



(井上さんにも大変お世話になりました。)


 今でこそ話題に上ることの多い海水淡水化ですが、その源流は意外と古く、1950年頃のアメリカまでさかのぼります。当時のカリフォルニアでは、人口増による水不足が既に深刻な問題となっていました。そのため、カリフォルニア州ロサンゼルスに拠点を置くUCLAUniversity of California, Los Angeles)では、海水淡水化研究に高い優先順位が置かれていました。彼らの研究は、1949年に始まっています。アメリカ政府もまた将来の水不足を懸念し、1952年に塩水法を制定して研究を始めています。

 アメリカに端を発した海水淡水化研究に対し、東レが逆浸透膜の開発を正式に始めたのは1968年です。これでも十分に昔のことになります。

 東レが開発を始めてしばらくすると、アメリカで有力研究者が頭角を現しました。John Cadotteです。ミズーリ州カンザスにあるMidwest Research Institute(今ではMRIGlobalとその名を変えています)で研究をしていたCadotteは、高い脱塩率と造水量を両立する逆浸透膜を1972年に開発しました。1978年には同僚とともにFilmTecを設立し、自ら開発した逆浸透膜を自分の手で事業化しています。彼は、通称「344特許」と呼ばれる重要特許も握っていました。

 Cadotteの業績は、数多くの大学研究者と企業研究者を刺激しました。東レの研究者達も良い刺激を受けたそうです。FilmTecは、その後1985年にDow Chemicalによって買収され、同社に加勢することとなります。学界と企業とを様々に渡り歩いたCadotteは、逆浸透膜の世界で直接的・間接的に大きな影響力を持ったのです。では、アメリカに端を発した海水淡水化の研究成果や科学知は、より具体的に、学界のなかでどのように広まり、どのようにして企業へ流れ込んで技術知へと転換されたのでしょうか。そして、その技術知は、次なる科学知の創出にどのように影響したのでしょうか。Cadotteの活動と業績を軸にして、こうした問いを分析したいと思っています。

 日本では、学界から産業界への知識移転が今後の重要な政策的課題としてしばしば取り上げられます。TLOTechnology Licensing Organization)という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。ただ、その知識移転メカニズムは、ことミクロレベルでの骨太の因果律となるとあまりよくわかっていないのが実情です。そこはきちんと解明しておきたいところです。「何がどうなるのか」という太い因果律が見えないまま闇雲に政策を進めても、税金の無駄打ちになりかねないからです。

 要するに何が言いたいのかというと、逆浸透膜開発における学界と産業界との相互作用過程を明らかにすることは、事例こそ古いものの、産学間知識移転のブラックボックスを解き明かすうえで大切な今日的テーマではないでしょうか、ということです。


(藤原雅俊)

地熱発電所新設計画(青島矢一)


3月23日

日経ネットに、福島の国立公園内に新たに地熱発電所が建設されるという報道がでていました。1999年以来の新設です。27万キロワットの国内最大の地熱発電所となる予定だそうです。八丁原が11万キロワットですから、実現すればかなり大きいです。


ざくっといってしまえば、30万人近い人の電気をまかなえます。9社が開発に参加して1000億円の投資をするということです。

2020年からの稼働を目指すとはいっています。ただ国立公園内でこれまで貯留槽の探索が十分できていないのではないかと思いますので、不安ではあります。

無錫から帰りの新幹線にのりました。和階号と書いてあります。来たときの列車と大してかわりませんが、高いです(95元)。気がついたのですが、8両しかありません。日本の新幹線は16両とかですから、それでスピードが違うのかもしれません。

市政府で聞いた話についてはまだ整理がついていないので、後ほどアップします。

(青島矢一)

振発新エネルギー訪問(2)(青島矢一)


321日 

振発がPV産業に進出した経緯を聞きました。質問に応じてくれたのは、輸出を担当する邢さんと、設計部長の李さんです。


一番左が邢さん右から二番目が市政府の曹さん

振発が新エネルギー産業に進出したのは2003年のことです。元の企業はエンジニアリング企業で(そちらは今もやっている)、PV産業への進出にともない、新たに振発新エネルギーを設立したわけです。当初は、PVの街路灯や、小さな独立の発電システムから始めまたそうです。


PV産業への進出のきっかけはやはり尚徳(サンテック)です。サンテックの成長を見て事業機会があると判断しています。最初はサンテックのパネルをつかって発電設備をつくっていました。


振発は、2007年、本格的に発電所事業に進出することを決めます。最初の2年間は、市場調査を行っていました。そして2009年から本格的に事業を始めます。サンテックとの提携を模索しましたが、サンテックが既に巨大企業であり、良い条件での提携がまとまらなかったので、トリナソーラーと上海に投資会社(JV)を設立しました。2010年下期のことです。当初は振発が8割、トリナが6割の出資比率でしたが、2010年は振発6割、トリナ4割となっています。


実際に大型の発電所を最初に建設したのは2010年で、20MWの発電所が最初です。江蘇省の北で、中国の国有企業からの発注です。建設期間は3ヶ月でした。


振発の発電所建設の流れは以下のとおりです。

2009年(<10MW
2010年(<30MW
2011年(<380MW(50MWの発電所が最大)
2012年(300500MW計画)


2011年に急に事業が大きくなったことがわかります。そのおかげで、現在、近くに本社ビルを建設しています。動きが速いです。


発電所建設にはいくつかのパターンがあるということです(このあたり様々な場所で聞いたのですが、ちょっとずつ話が異なるので、別途どこかでまとめます)。


1つめは、5つある国営の発電企業(これを電力会社と呼ぶので、送電企業と区別がつきにくく、ちょっとわかりにくかったです)から直接発注を受けるケースです。発電企業は主として火力発電所などを所有して、国営の送電企業に電気を販売していますが、一定量は再生可能エネルギーで発電しなければならないことになっているようです(RPS法のようなものだと思います)。そこで、PV発電所への投資を行います。


この場合には入札となります。入札の仕様には、発電コスト、工期、アフターサービスなど様々な条件があります。振発のようなエンジニアリング企業だけでなく、サンテックのようなモジュール企業も入札するそうです。


ただしモジュール企業は、システムエンジニアリングが得意ではないので、しばしば、コストの見積もりを誤り、落札しても赤字になってしまうことがあるそうです。その場合には、落札した企業から、振発に話が持ち込まれることもあります。


もう1つの受注パターンは、子会社である上海の投資会社(振発とトリナの合弁)からの発注を受ける場合です。この時には入札とはなりません。上海の投資会社が事前に発電企業と話をつけた上で、投資会社(子会社)が親会社に工事を発注することになります。なので、入札の必要はないのだそうです。


発電システムの変換効率は、モジュールの変換効率の6080%とのことです。モジュールが16%であれば、10%から13%くらいといったところです。トラッキングシステムを導入すると効率は1520%向上するということです。


PV産業発電所のコストの50%から60%はモジュールです。モジュールのコスト割合が非常に高いです。インバーターなどの電気系が20%から30%です。材料や部品を除いた建設にかかる費用が10%程度です。モジュールコストの多くがセルのコストで、セルのコストの多くがシリコンウェハのコストですから、こうしてみると、とにかくこの産業は(現状では)シリコンの値段が鍵となっています。


発電所のワット単価は12元から15元です。日本円にして150円から200円といったとこです(土地代が5元/wといっていたようにも思うのですが、はっきりしません。後で確認します)。kw単価では15万円から20万円。日本の家庭用の太陽電池の価格が、工事費込みで30万円台後半/kwから70万円/kwくらいですから、事業用と家庭用でどのくらい異なるのかわかりませんが、半分以下といったところでしょうか。

日本がエネルギー問題の解決だけを目的とするなら、中国企業に進出してもらった方がいいです。一方、産業政策を絡めて、日本企業を保護しようとしても、全量固定価格買い取りが始まれば、限界があるように思います。PV産業を日本の重要産業として促進するのであれば、次世代技術開発を加速化するしかないと思います。

(青島矢一)

振発新エネルギー訪問(1)(青島矢一)


2012年321

午後は、振発新エネルギーを訪れました。無錫市政府の蘇さんの紹介によります(蘇さんは日本にいたことがあり、日本語ができます)。市政府経由でお願いするとほぼ問題なく受け入れてくれます。中国では市政府が強いです。

太陽光発電所(http://www.zhenfa.com/en/)


振発は、中国でもっとも大きなPVのシステム企業(エンジニアリング企業)です。要するにPV発電所を建設する企業です。ここ1年から2年で急成長した企業です。


対象市場のほとんどは中国国内です。海外市場では、これまでに4000万元の輸出をオーストラリアにしています。オーストラリアと日本に販売会社があります。


まず会社紹介のビデオをみました。僕のために英語のビデオにしてくれました。これは助かります。中国語を通訳してもらうと、おそらく半分くらいは情報が伝わっていないと思われます。


振発は、2009年から現在までで415MWの発電所を建設してきました。今後の計画は2.258GWとなっています。自社技術をもっていて、数多くの特許を押さえていることを強く宣伝していました。このあたり中国企業だな、という印象です(日本企業で特許を宣伝する企業はほとんどないと思います)。


振発はPV発電所の様々な形態に取り組んでいます。いろんなタイプの発電所を知りました。たとえば、AIPVとはAgriculture Integrated PVのこと。農地に発電所をつくるのですが、農業はそのまま行われているというタイプです。農業と発電の統合ということです。BIPVBuilding Integrated PVで、ビルの壁面や屋根部分にPVパネルを使うタイプです。日本と異なって中国では家庭用PVはほとんどありませんので、一軒家の屋根にPVパネルと載せることは想定されていないようです。Animal Husbandry Integrated PVというのもありました。これは畜産と統合したPV発電所です。


つまりこれらは、農業やビルなどと場所を共有して、双方を両立させて経済性を高めようとする仕組みです。PV発電所建設で鍵となるのは場所の確保ですから、筋の通った考え方だと思います。


ビデオではいろんな発電所の紹介がありました。これまで建設した一番大きな発電所は、50MWの発電所です。これは風力発電と組み合わさっているそうです(でもHPでは確認できませんでした)。最初に風力発電所があり、そのまわりにPV発電所を建設しています。寧夏(Ningxia)の発電所は、砂漠に建設して、砂漠の緑化を実現したものです。国から表彰を受けたといっていました。


寧夏の50MW発電所

中国のPV発電所のほとんどは西の内陸地域に作られます。無錫にいるとその理由がわかります。ここにはほとんど太陽がありません。僕がここにいる間、太陽を見ることができたのは、1日の内の数時間だけでした。青空はほとんどありません。だいたいこんなものだそうです。


風力発電所もほとんど西側の内陸につくられるとのことでした。このことは、中国が再生可能エネルギーをすすめる上で、問題となると思います。電力を必要としているのは、沿岸部です。内陸で発電したものを、沿岸部まで遠路、送電しなければなりません。かなりのコストがかかりますし、送電ロスも大きいと思います。


振発が得意としており特許をおさえている技術は、Tracking Systemに関わるものです。太陽の動きに合わせて、最も発電効率の良い方向にパネルを動かし続ける技術です。日本の庭ではどうか、と聞かれましたが、都心部で広い庭をもっている人は限られるので、日本では難しいと思います。ちなみに3.06kwのシステム(日本で家庭用に売られているのと同じくらいの出力)で550kgの重さでした。


Tracking System


現在、日本のオムロンと共同事業の話を検討しているといっていました。オムロンがインバーターを含む電機系を担当して、日中で発電所建設をすすめるということを考えているようでした。

(青島矢一)

無錫橋聯集団訪問(Wuxi QiaoLian Wind Power Technology) 訪問(青島矢一)


320日 

***以下のブログ記事は、3月20日に(Qiaolian)を訪問した時に聞いた話をもとに書いたものですが、8月に同業の江蘇吉鑫(Jixin)で聞いた話と多少矛盾するところがあります。おそらくJixinの話が正しいと思われます。Qiaolianが2004年から事業を始めたといっているのは、Jixinから受けた鋳物の機械加工です(Jixinでは2005年といっていましたので、これがQialianの自社工場にあたると思います。この部分は大きな矛盾はありません)。2006年から鋳物も始めたというのは、Jixinが2007年まで、Qiaolianの工場を借りて機械加工をしていましたが、2007年から自社生産を始めたのに対応して、Qialianも自分で鋳物を始めたということです。シェアが中国トップというのは間違いのようです。現在のトップはJixinです。また風力の発電単価がPVの発電単価よりも高いと述べていたのですが、それは間違いだと思われます。***


今日は 風力発電向け製品を製造している橋を訪問しました。橋はもともと大型の金属加工を得意とする企業で、2004年に、風力発電関連事業に多角化して、Wind Power Technologyを設立しました。現在、風力発電向け部品事業では、中国でトップ企業だといっていました。理事の曹さんが対応してくれました。


は、風力発電設備に使われる大型の部品を製造しています。部品といっても巨大で、工場でみた1つは、風力発電のポールを地面で受け止める部分の土台のような部品で(名称はわからない)、もう1つは、タービンのブレードを収める部分の部品です。

タービンを受ける部品
地下で設備を受ける部品らしい

2004年に風力発電向け事業を始めたときには、鋳造品の機械加工だけをやっていました。江陰市の風力関連企業がインドから受けたオーダーをさばききれないということで、仕事がまわってきたのだそうです。その後は、インドから直接オーダーが入るようになりました。2005年には、自社工場をつくりました。顧客の8割は海外でした。


2006年からは、自社で鋳造も手がけるようになりました。海外の顧客には、Vestas、三菱、GEといった企業名がありました。インドやスペインにも顧客がいるそうです。国内では東方電器、三一電器などなど、うまく聞き取れませんでした。


2006年から2008年は風力発電事業にとっては非常に良い時期でした。その時期、橋の粗利益率は80%で、純利益率も40%だったといいます。そこで、ニューヨークでの上場の話も持ち上がりました。海外の投資家から8000万ドルの投資の話もきました。


新エネルギー産業に吹く追い風を受けて、20093月に、無錫市政府は、新エネルギー関連の企業78社を集めて、PVは尚徳を中心に、風力発電は橋を中心に事業を促進することを提案しました(中国では政府の方向付けの影響が極めて大きいようです)。風力発電に関しては、日本のMHIの協力も受けて、新たに無錫に産業パークをつくって、タービンや発電機を含めて風力発電所全体を一貫生産する計画が出されました。無錫市政府が1億ドル、橋2億ドルを出資するという計画でした。


しかし、200910月に、中国の中央政府が風力発電を制限する政策を出しました。生産能力が多すぎるというのが理由です。これ以降、中国の風力発電建設は急速に縮小しました。中国政府が風力発電を制限するという意味がよくわからないのですが、国内の顧客はほとんど国営企業ですから、国営企業が風力発電所をつくらなくなるという意味だと思います(中国では政府の方針によって産業が大きく影響を受けると皆が口を揃えていうのですが、その意味が今一歩よくわかっていません)。

曹さんは、中央政府の制限政策は橋にとっては厳しいものだけれども、中国全体としては正しい政策だと言っていました。そもそも風力発電は、火力などの3倍の発電単価です。政府は、それを補填するほどの補助金はだせません。PVの方がまだ経済性が高いです(このあたり日本と事情が異なる)。しかも風がないと発電しませんから、出力が不安定です。


2006年から2008年に市場が伸びた時に、多くの粗悪品が出回ったといいます。風力発電設備の90%は鉄鋼でできています(といっていましたが、本当かわかりません)。しかし、5トンの鉄から品質の良い鉄は1トンしかとれないといいます。当時は、輸出が8割であって、品質の良い1トンの鉄鋼は全て輸出品にまわってしまいました。そして、国内市場向けには粗悪な鉄を使った品質の悪い製品が流れたといいます。


その後、海外からの注文が急速に減った結果、現在は、海外向けが2割、国内向けが8割となっています。海外市場が大幅に減ったこともあって、最大手の東方電器が60%減産、それ以外は90%も減産したといいます。橋も現在は厳しい状況にあるようです。



風力発電所は風の吹く西の内陸部に建設されるのですが、内陸部ではそれほど電器の需要があるわけではありません。また風力よりずっと効率の良い水力発電もあります。需要のある沿岸部まで送電するのはコストがかかりすぎます。そういった意味で、風力発電はまだまだだと曹さんは考えているようです。


風力発電所建設のコストは1基あたり3000万元から6000万元だそうです。発電単価では火力の3倍から4倍といっていました。


風力発電設備のコストの40%は制御関連(電気・電子)で、20%がタービン、20%が発電機、残りの20%を橋が提供しているような部品が占めているそうです(このあたり正確な数字ではなさそうです。人件費などがどこに入るのかわかりません)。


最も高価なのは制御部分で、これはドイツの企業がほぼ独占しているのだといっていました。非常に興味あるところです。少し調べてみたいと思います。


の製造原価の70%は原材料費だそうです(鉄鋼)。中国での市場シェアはかつては20%でトップでした。今もトップだそうですが、シェアは低下しているといっていました。従業員は800人です。橋網グループとしては、原子力や火力発電向けの大型部品や、太陽電池の製造設備もやっているそうです。

熱烈歓迎というのがいつも恥ずかしい
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  中国ではMWを兆ワットといいます。非常に紛らわしいです。兆は百万(メガ)の百万倍です。途中まで、兆ワットというので、こんな大きなはずはないと、理解に苦しみました。数学的には日本と同じように兆という単位があるのですが、日常用語では、メガを兆というのだと、後で説明してもらいました。うーん、紛らわしい。
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(青島矢一)