2012年10月16日火曜日

【研究会報告】日本ブランド地中熱利用換気システム



CO2削減とイノベーション」研究会
  第13回研究会報告 2011.12.1


「日本ブランド地中熱利用換気システム」

  橋本真成 氏

  (㈱ジオパワーシステム 代表取締役社長)



2011年の大震災以降、日本国民の省エネ意識は劇的に変化した。日々の暮らしにおいて、まずできることは何か。そこに向けられた人々の関心は非常に高い。そのようななか、地中熱を利用した独自の空調システムで注目されているのが㈱ジオパワーシステムである。鍾乳洞から発想したというこのシステムは、単に節電を目的とするのではなく、住空間を通して自然エネルギーを暮らしとともにデザインすることを提案している。今回の研究会では、その若き社長にご登場いただき、システムの特徴とあわせて、開発を支える同社のユニークなコンセプトについても、じっくりとお話をうかがった。

★★ 講演録として、より詳しい内容を「リサーチ・ライブラリ」にて公開しています ★★      
    ↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら  (研究会・講義録項からダウンロードできます
         http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/ja/pdfs/portal?lid[]=13



【講演要旨】

夏、鍾乳洞の中に入ると涼しい。そうした天然のクーラーをヒントに考案されたのが、パッシブ地中熱利用換気システムGEOパワーシステム」である。



地盤の温度は一年を通して一定であることに注目し、“空気の井戸”を作るという発想のもと、独自開発の二重構造パイプを地下に埋めて、外から空気を送りこんで熱交換するシンプルなシステムである。

工夫のポイントとしては、足下5メートルというごく浅い層にパイプを埋めることでコストを抑えているほか、エネルギーを削減するため、床下の空間にグリ石(砕石)を敷きつめた蓄熱層をつくり、太陽熱や排熱などを溜め、地中熱の循環を安定させているところにある。

さらに、このシステムの特徴として、換気システムとして利用できることが挙げられる。現在、建物内には換気設備の設置が義務づけられているが、当該システムを設置すれば、施工費を軽減できるほか、イニシャルコスト、ランニングコストも軽減できる。また、地中に埋設するパイプ内に溜まる結露水には、空気を浄化する作用のあることもわかってきており、地中熱とともに清浄な空気を循環させる点、深刻化するシックハウス問題にも非常に有効となる。




室内と外気の温度差をあまり大きくはできないものの、温度を緩やかに調節することで体を自然に慣れさせていき、“省エネな体をつくろう”というのが開発コンセプトで、実際の運用データをみても、節電対策や災害時のインフラのみならず、健康効果、ひいては農業利用など、利用者に新たな付加価値をもたらす新システムとしての可能性を開きつつある。また、自然エネルギーをデザインしたということで「グッドデザイン賞」を、おもてなしの心を形にしたということで「新日本様式100選」を受賞するなど、評価や注目の集め方も実にユニークである。



システムの普及については、地元の工務店や建築会社に技術供与を行って提携関係を構築し、提携料を徴収する一方、技術の質を確保しながら、口コミを広げ、着実に事業展開を進めている。また、来年以降は海外にも進出していく予定で、すでにアメリカの設計事務所が採用を決めており、日本ブランドの癒し系の換気システムとして、今後は海外での成長も期待できると考えている。 

越谷レイクタウンにあるGEOパワーシステムの体験施設(モデルハウス)




 (文責:藤井由紀子)



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