「CO2削減とイノベーション」研究会
第16回研究会報告 2012.5.10
「マイクログリッドにおけるデンソーの取り組み」
金森淳一郎 氏
(㈱デンソー研究開発1部
DPマイクログリッド開発室 室長)
※現在は技術開発センター マイクログリッド事業開発室
CO2削減の観点から、ますます注目を浴びる電気自動車。しかし、結局のところ、この電気自動車も、火力発電によるエネルギーを利用しているかぎり、ガソリンで車を走らせることと何ら変わりはない。特に、東日本大震災を承けて、原子力発電への依存度が変わりつつある今、これを社会のしくみのなかにいかに組み入れ、エネルギーの高効率化にいかに寄与させていくか、車という枠組を超えた、具体的でリアルな議論が求められている。そこで、今回の研究会では、㈱デンソーの金森淳一郎氏にお越しいただき、車を機軸に、住宅や商業施設へと視野を広げ、マイクログリッド分野での事業を展開しはじめたその取り組みと、実証実験の概要についてお話をうかがった。
★★ 講演録として、より詳しい内容を「リサーチ・ライブラリ」にて公開しています ★★
↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら (研究会・講義録項からダウンロードできます)
http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/ja/pdfs/portal?lid[]=13
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【講演要旨】
EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)時代の到来に向けて、現在、デンソーでは、自動車まわりで培ってきた要素技術を、マイクログリッド分野に応用することに着手している。「家と車」・「電気と熱」のエネルギーを最適制御する技術を開発して低炭素社会に貢献する、というのがその基本コンセプトで、住宅や商業施設の分野にまで踏み込んでシステムを開発している。例えば、給湯は日本人の生活に非常に高いウエイトを占めるが、CO2ヒートポンプを蓄熱装置としてこれに活用することで、エネルギーコストを抑えつつエネルギーのCO2低減を図っている。単に自動車の電動化だけでなく、デンソーの基幹事業の一つである熱機器を活かしてモデルを組み立て、さらにはこれらを様々な地域での実証実験の場にも持ち込んでいる。
現在、デンソーが参画しているなかで最もリアリティのある実証実験は、経済産業省の主導のもと、4つの都市で開始されたスマートコミュニティ実験のうち、トヨタグループを中心に進められている豊田市のプロジェクトである。一般の方々を対象に実際に住宅を分譲し、そこに各社が持ち寄ったスマート機器や自動車を投入して、コミュニティ全体でCO2を減らそうと試みている。デンソーはここでは、蓄電池、エコキュート、HEMS(ホームエネルギー管理システム)、コンビニ用BEMS(商業施設管理システム)、および、これと連携させた電動冷凍トラックなどを担当している。
また、将来、マイクログリッドの市場を確実に創出していくためには、普及を動機づけるユーザーのリアルなニーズを探りだしていくことも重要な課題となる。デンソーでは実証実験を続ける一方で、専門チームを組み、各地でのニーズ探索にも乗り出している。そして、そこでは再生可能エネルギーのユーザーについて、従来行われてきたような、平均的ユーザーを対象にニーズの汲み上げを行うのではなく、特徴あるユーザー(リードユーザー)を対象とした独自調査を行うことで、「ユーザーにとって再生可能エネルギーがもたらす“リアルな経済的価値”とは何か」を具体的に洗い出すことに努めており、いずれその成果を革新的なシステム開発に結びつけていこう、と考えている。
(文責:藤井由紀子)
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