2012年10月26日金曜日

【研究会報告】マイクログリッドにおけるデンソーの取り組み


CO2削減とイノベーション」研究会
  第16回研究会報告 2012.5.10

「マイクログリッドにおけるデンソーの取り組み」

 
金森淳一郎 氏

(㈱デンソー研究開発1部 
  DPマイクログリッド開発室 室長)
   ※現在は技術開発センター マイクログリッド事業開発室


CO2削減の観点から、ますます注目を浴びる電気自動車。しかし、結局のところ、この電気自動車も、火力発電によるエネルギーを利用しているかぎり、ガソリンで車を走らせることと何ら変わりはない。特に、東日本大震災を承けて、原子力発電への依存度が変わりつつある今、これを社会のしくみのなかにいかに組み入れ、エネルギーの高効率化にいかに寄与させていくか、車という枠組を超えた、具体的でリアルな議論が求められている。そこで、今回の研究会では、㈱デンソーの金森淳一郎氏にお越しいただき、車を機軸に、住宅や商業施設へと視野を広げ、マイクログリッド分野での事業を展開しはじめたその取り組みと、実証実験の概要についてお話をうかがった。

★★ 講演録として、より詳しい内容を「リサーチ・ライブラリ」にて公開しています ★★      
    ↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら  (研究会・講義録項からダウンロードできます)
         http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/ja/pdfs/portal?lid[]=13


【講演要旨】

EV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)時代の到来に向けて、現在、デンソーでは、自動車まわりで培ってきた要素技術を、マイクログリッド分野に応用することに着手している。「家と車」・「電気と熱」のエネルギーを最適制御する技術を開発して低炭素社会に貢献する、というのがその基本コンセプトで、住宅や商業施設の分野にまで踏み込んでシステムを開発している。例えば、給湯は日本人の生活に非常に高いウエイトを占めるが、CO2ヒートポンプを蓄熱装置としてこれに活用することで、エネルギーコストを抑えつつエネルギーのCO2低減を図っている。単に自動車の電動化だけでなく、デンソーの基幹事業の一つである熱機器を活かしてモデルを組み立て、さらにはこれらを様々な地域での実証実験の場にも持ち込んでいる。



現在、デンソーが参画しているなかで最もリアリティのある実証実験は、経済産業省の主導のもと、4つの都市で開始されたスマートコミュニティ実験のうち、トヨタグループを中心に進められている豊田市のプロジェクトである。一般の方々を対象に実際に住宅を分譲し、そこに各社が持ち寄ったスマート機器や自動車を投入して、コミュニティ全体でCO2を減らそうと試みている。デンソーはここでは、蓄電池、エコキュート、HEMS(ホームエネルギー管理システム)、コンビニ用BEMS(商業施設管理システム)、および、これと連携させた電動冷凍トラックなどを担当している。



また、将来、マイクログリッドの市場を確実に創出していくためには、普及を動機づけるユーザーのリアルなニーズを探りだしていくことも重要な課題となる。デンソーでは実証実験を続ける一方で、専門チームを組み、各地でのニーズ探索にも乗り出している。そして、そこでは再生可能エネルギーのユーザーについて、従来行われてきたような、平均的ユーザーを対象にニーズの汲み上げを行うのではなく、特徴あるユーザー(リードユーザー)を対象とした独自調査を行うことで、「ユーザーにとって再生可能エネルギーがもたらす“リアルな経済的価値”とは何か」を具体的に洗い出すことに努めており、いずれその成果を革新的なシステム開発に結びつけていこう、と考えている。




(文責:藤井由紀子)


 ↓ 「CO2とイノベーション」研究会についてはこちらをご参照ください















2012年10月23日火曜日

サムスンの水ビジネス参入(積田淳史)

 2012年9月16~21日、韓国でInternational Water Association主催のIWA World Water Congress & Exhibitionが開催されました。このタイミングで、韓国企業の雄・サムスングループが、水ビジネスに参入することが発表されました(参考:NHK時事公論)。



2012年10月17日水曜日

【研究会報告】高効率・高温ガスタービンの開発と工業化

CO2削減とイノベーション」研究会 
正田氏(中央)
  第15回研究会報告 2012.2.9


高効率・高温ガスタービンの開発と工業化」                        

正田淳一郎 氏 

(三菱重工業㈱ 原動機事業本部ガスタービン技術部 部長)



2009年9月、当時の日本国首相は、国連の演説において、2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比25%削減する」という目標を、国際公約として掲げた。昨年の大震災を承けて、公約撤回の動きもないではないが、この25%の削減案は、原子力発電所の新設を前提にしても大きな足かせといわざるをえない。そもそも日本の場合、CO2削減に関する意識がすでに高く、技術革新も相当に進んでいる、という現状があるからである。そこで、今回の研究会では、火力発電におけるガスタービンの高温・高効率化世界一を実現した、三菱重工業の正田氏にお越しいただき、その開発経緯とそれを支える問題意識、さらには将来的な展望について詳しくお話をうかがった。

★★ 講演録として、より詳しい内容を「リサーチ・ライブラリ」にて公開しています ★★      
    ↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら  (研究会・講義録項からダウンロードできます
         http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/ja/pdfs/portal?lid[]=13


【講演要旨】

ガスタービン(C1)を用いた火力発電において、近年、増えているのが、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電(C2)である。ガスタービンを使って発電した後、その排熱を利用してつくった蒸気で蒸気タービンを回転させ、もう一度電気をつくるという発電方式である。高効率のガスタービンは、高い排ガスエネルギーを有するので、そこに蒸気タービンを組み合わせれば、高いプラント効率を達成できる。すなわち、同じ量の燃料でも、通常の火力発電より多くの電力をつくることが可能になるため、結果としてCO2の排出量を抑えることにつながるわけである。



地球温暖化 防止の上からCO2削減が世界的な課題になっている今、三菱重工業がガスタービンの開発に力を注いでいる意義も、まずはこの点にある。しかし、理由はそれだけにとどまらない。化石燃料のなかで最も燃費のよいガスタービンは、コストを安く抑えることができる。加えて、発電量が変えやすいという点で運用性が非常に高く、必要に応じて発電量を調整しやすいため、再生エネルギー増加で発電量変動増加が予想されるなか、そのニーズも高まっている。さらには、震災の影響もあり、建設期間が非常に短く、緊急時などの対応性がよいことも、ガスタービンの特徴として注目を集めつつある。


ただし、高温で焚けば燃費がよくなり、CO2排出量も抑えられるとはいえ、高い温度で長時間、発電しつづけるという状況は、高温下でのガスタービン自体の耐久性、および、NOx(窒素酸化物)発生による環境負荷といった問題を生む。三菱重工では、タービンの羽根(C3)のデザイン、コーティング、材質に独自の工夫を施しているほか、空気と燃料を混合させて燃焼させる予混合燃焼器(C4)にも工夫を盛り込むなど、いくつかのキーテクノロジーによって問題を解決しつつ、NOxでありながら、タービン入口温度1600℃、熱効率61.5%という、世界最高レベルの出力と効率を実現した。



また、開発プロセスとしては、研究・開発・実証実験の各部門を一つのエリア(高砂)に集約させており、組立工場の横に実際の発電所をつくって、初号機の運用を検証しつつ開発を進めている。さらに、国のプロジェクトとして補助金を得ながら要素技術開発を推し進め、それらを順次適用して性能向上に努めており、1700℃級超高温ガスタービン実現の可能性も見えはじめている。その一方で、太陽熱とガスタービンを組み合わせるなど、従来の技術的な蓄積を活かして新たな取組み(C5)への着手も進めている。


 (文責:藤井由紀子)



                                        












 ↓ 「CO2とイノベーション」研究会についてはこちらをご参照ください



 

2012年10月16日火曜日

【研究会報告】日本ブランド地中熱利用換気システム



CO2削減とイノベーション」研究会
  第13回研究会報告 2011.12.1


「日本ブランド地中熱利用換気システム」

  橋本真成 氏

  (㈱ジオパワーシステム 代表取締役社長)



2011年の大震災以降、日本国民の省エネ意識は劇的に変化した。日々の暮らしにおいて、まずできることは何か。そこに向けられた人々の関心は非常に高い。そのようななか、地中熱を利用した独自の空調システムで注目されているのが㈱ジオパワーシステムである。鍾乳洞から発想したというこのシステムは、単に節電を目的とするのではなく、住空間を通して自然エネルギーを暮らしとともにデザインすることを提案している。今回の研究会では、その若き社長にご登場いただき、システムの特徴とあわせて、開発を支える同社のユニークなコンセプトについても、じっくりとお話をうかがった。

★★ 講演録として、より詳しい内容を「リサーチ・ライブラリ」にて公開しています ★★      
    ↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら  (研究会・講義録項からダウンロードできます
         http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/ja/pdfs/portal?lid[]=13



【講演要旨】

夏、鍾乳洞の中に入ると涼しい。そうした天然のクーラーをヒントに考案されたのが、パッシブ地中熱利用換気システムGEOパワーシステム」である。



地盤の温度は一年を通して一定であることに注目し、“空気の井戸”を作るという発想のもと、独自開発の二重構造パイプを地下に埋めて、外から空気を送りこんで熱交換するシンプルなシステムである。

工夫のポイントとしては、足下5メートルというごく浅い層にパイプを埋めることでコストを抑えているほか、エネルギーを削減するため、床下の空間にグリ石(砕石)を敷きつめた蓄熱層をつくり、太陽熱や排熱などを溜め、地中熱の循環を安定させているところにある。

さらに、このシステムの特徴として、換気システムとして利用できることが挙げられる。現在、建物内には換気設備の設置が義務づけられているが、当該システムを設置すれば、施工費を軽減できるほか、イニシャルコスト、ランニングコストも軽減できる。また、地中に埋設するパイプ内に溜まる結露水には、空気を浄化する作用のあることもわかってきており、地中熱とともに清浄な空気を循環させる点、深刻化するシックハウス問題にも非常に有効となる。




室内と外気の温度差をあまり大きくはできないものの、温度を緩やかに調節することで体を自然に慣れさせていき、“省エネな体をつくろう”というのが開発コンセプトで、実際の運用データをみても、節電対策や災害時のインフラのみならず、健康効果、ひいては農業利用など、利用者に新たな付加価値をもたらす新システムとしての可能性を開きつつある。また、自然エネルギーをデザインしたということで「グッドデザイン賞」を、おもてなしの心を形にしたということで「新日本様式100選」を受賞するなど、評価や注目の集め方も実にユニークである。



システムの普及については、地元の工務店や建築会社に技術供与を行って提携関係を構築し、提携料を徴収する一方、技術の質を確保しながら、口コミを広げ、着実に事業展開を進めている。また、来年以降は海外にも進出していく予定で、すでにアメリカの設計事務所が採用を決めており、日本ブランドの癒し系の換気システムとして、今後は海外での成長も期待できると考えている。 

越谷レイクタウンにあるGEOパワーシステムの体験施設(モデルハウス)




 (文責:藤井由紀子)



 ↓ 「CO2とイノベーション」研究会についてはこちらをご参照ください


                                          

 

2012年10月4日木曜日

《magicc ニュース 1》 「CO2削減とイノベーション」研究会  講演録公開のお知らせ 



「CO2削減とイノベーション」研究会  講演録公開


201010月以後、再スタートした研究会について、ゲストスピーカーのご講演を、一部、講演録として公開することにいたしました。 ※質疑応答部分を除lきます

ご講演者のご了解をいただけたものに限られますが、過去にお話いただいたご講演の内容を、ご講演資料を交えながら原稿としてまとめ、「リサーチ・ライブラリ」のコーナーに順次アップしていく予定です。ご興味のある方は、magiccのトップページの「リサーチライブラリ」から入っていただき、「研究会・講義録」のコーナーよりダウンロードすることができます。

なお、「リサーチ・ライブラリ」には、上記のほか、magicc関連の論文、ケース・スタディなどを掲載しています。講演録と同様、一部、ダウンロードすることができますので、ご興味のある方はどうぞご高覧ください。

↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら
http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/ja/pdfs/portal?lid[]=13


 「CO2とイノベーション」研究会についてはこちら



研究会の様子