2012年1月31日火曜日

【研究会報告】地中熱利用の普及に向けた課題


CO2削減とイノベーション」研究会 
  第12回研究会報告 2011.8.27
    
「地中熱利用の普及に向けた課題」 笹田政克 氏
 (NPO法人 地中熱利用促進協会 理事長)



20116月、新たに策定された「エネルギー基本計画」において、今後、導入拡大すべき再生可能エネルギーの一つとして、地中熱が初めて取り上げられた。ただし、日本ではその認知度は低く、地中熱と聞いて、地熱発電のことだと誤解する人はまだまだ多い。そこで、今回の研究会では、地中熱利用促進協会の理事長笹田氏をお迎えし、地中熱利用の特徴とメリットについて詳しくお話を伺うとともに、なぜ日本では地中熱利用の普及が遅れているのか、現時点で地中熱利用が抱える課題についても、様々な角度から語ってもらった。

★★ 講演録として、より詳しい内容を「リサーチ・ライブラリ」にて公開しています ★★
    ↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら  (研究会・講義録項からダウンロードできます)
         http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/ja/pdfs/portal?lid[]=13


【講演要旨】  


地中熱とは、主に太陽を熱源として、その熱が地中に一定の温度でとどまっているという状態を指す。どんな場所であっても、地下10m程度の深さになると、年間を通じてほぼ一定の温度に保たれており、そういった“常に地中では温度が一定である”という特性を利用しようとするのが、地中熱利用である。
  
地中熱利用の歴史は古く、今日すでに確立されているものだけでも、熱伝導、空気循環、水循環、ヒートパイプ、ヒートポンプシステムなどの各利用法がある。しかし、このうち熱利用という点で圧倒的に優れているのが、地中熱ヒートポンプシステムで、世界的にも最も普及しているシステムでもある。このシステムは、一般的な空冷システムと比べると省エネ性が高く、冷房の排熱を空気中に排出せず、地中に吸収させることで、ヒートアイランド効果を抑制することも期待できる。

しかしながら、日本では地中熱はほとんど普及していない、というのが現状である。羽田国際空港、東京スカイツリーなど、最新の施設には地中熱が採用されているが、どこにあっても常に安定的に供給できる自然エネルギーであるにもかかわらず、企業や一般家庭での利用はまだほとんど実現できてはいない。

その一番の原因は、初期導入のコストが高いということにあり、あわせて地質情報の整備も発展途上であるなど、克服すべき課題も多く残されている状態にある。加えて、政府によるバックアップが遅れ、一般における再生可能エネルギーとしての認知度がとても低い、ということも少なからず影響している。とはいえ、地中熱利用のポテンシャルは高く、今後、これが日本で普及していくためには、技術革新によるコスト削減を進めていくと同時に、政府による政策支援といかにマッチングさせるかが重要になってくるであろう。


(文責:藤井由紀子)


≪講演会資料≫ 講演会資料のうち一部を抜粋して公開しています
magicc掲載用/笹田氏資料抜粋
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(藤井由紀子)