2014年5月23日
現在、わいた山の麓、九重町の菅原地区で5,000kWのバイナリー発電の建設が進んでいます。開発しているのは、九州電力の子会社の西日本環境エネルギーで、JOGMECの債務保証の対象案件となっています。現場を見学させてもらい、開発の経緯など簡単に説明していただきました。
九重町役場で待ち合わせをして、現地まで車でいきました。現地までの途中では牧歌的なすばらしい景色が広がっていました。九重のあたりは本当に美しいです。
仮事務所からの景色 |
開発場所はもともとNEDOが地熱調査をしていたところです、NEDOが掘削して、その後に九重町が譲り受けた生産井2本と還元井1本が今回の発電所向けに使用されます。H22年度頃から九重町から九電に話がもちこまれて、その後、噴出調査と周辺温泉への影響調査を経て、H25年11月22日に、広瀬勝貞大分県知事立会のもと、西日本環境エネルギー、九州電力、九重町の3者で「菅原地区における地熱発電事業に関する基本協定」が結ばれ、具体的な開発が始まりました。
生産井の蒸気温度は2本とも160℃、井戸の深さは800mです。還元井の深さは600mです。
地熱井 |
5,000kWの発電所といえば、それなりの大きさで、現地の工事の様子からも、その規模がうかがえました。発電所の建設場所は、山の中をかなり奥に入ったところなので近くに集落はみえません。それでも、周辺には多くの温泉場があるので、開発に対する反対する意見もあったのではないかと質問しましたが、反対はほとんどなかったそうです。
工事の様子 |
開発主体に九重町が含まれており、住民には九重町の役場の人が直接説明に出向いたことがよかったのではという意見でした。たぶんそのとおりだと思います。地熱発電の開発では、自治体が開発を推進はするものの、住民との関係では中立の立場を保つため、住民への説明には積極的に関与せず、その結果、住民の人たちの同意が得られないことはあります。
九重町の資金負担はありません。町は発電所に熱供給をする立場であり、熱の代金が、九重町に支払われるという形になります。したがって、発電が成功すれば、九重町にもお金は落ちますし、住民も恩恵を受けることができます。
5,000kWの出力を予定していますが、ポンプなど所内にかかる電力に1,000kW分とられるということですので、売電できる量は最大でも4,000kWとなります。FITの設備認定も4,000kWにとなっています。これでたとえば稼働率が80%だとすると、年間の売電額は、40円/kW(税抜)の買取価格で11億円くらいになります。割引率を3%として15年で収入は約131億円です。開発費は機密事項とのことでしたので残念ながら採算性は計算できません(JOGMECの債務補償額は40億円ですが、これは開発費の一部と書かれていますので、全体額がわかりません)。
FITなしでも成り立つのかという点が最も知りたいところなのですが、それはわかりません。電柱の設置を含めて送電線を引っ張ってこなければならなかったことに加えて、系統連携にかかる負担の大きいようです。太陽光発電バブルで、電力会社が新たな系統連携に追加的な投資をしなければならなくなっています。その場合には、発電事業者にも負担が求められます。太陽光バブルが地熱開発にも影響している一面です。
経済性の詳細がわからないので何ともいえませんが、この規模ですと、環境アセスメントの必要もありませんし、住民の同意も得やすいと思います。30MWとか50MWといった大規模発電の開発を10年15年かけて苦労して進めるよりは、数メガワット規模の発電所をたくさんつくる方が早いのではないかとは思います。実際、ここは、開発を始めて1年で稼働する予定となっています。
ただきちんとした経済性の評価が必要です。(青島矢一)