第21回研究会報告 2013.7.18
「スマートグリッドの近況―デマンドサイドマネジメントを中心としたイノベーション」
池田一昭 氏
(日本アイ・ビー・エム㈱ スマーター・シティー事業部 新規事業開発 部長)
東日本大震災以後、それまでの安定供給から一転、日本は深刻な電力不足に陥ったが、それが節電と値上げという形となって社会を圧迫したことで、エネルギー需給に対する人々の意識は大きく変化した。エネルギー問題に需要側がどう協力していくのか、議論は日を追って具体的になっている。そこで、今回の研究会ではIBMの池田氏にご登壇いただき、デマンドサイドマネジメントの有効性について改めて提示していただいた。社会的な認識、現状での取組みと問題点、さらにはその方策と将来の展望など、IBMが手掛けている事例も交えて、活発な議論を喚起していただいた。
★★ 講演録として、より詳しい内容を「リサーチ・ライブラリ」にて公開しています ★★
↓ 「リサーチ・ライブラリ」へのリンクはこちら (研究会・講義録項からダウンロードください)
http://pubs.iir.hit-u.ac.jp/ja/pdfs/portal?lid[]=13
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【講演要旨】
東日本大震災以後、日本のエネルギーはずっと安定供給体制にあったが、3.11以降、逼迫状況に陥ったことで、需要側が協力してエネルギー問題に取り組むデマンドサイドマネジメントへの関心が急速に高まった。
IBMが先進国を対象に行っている消費者動向
調査の結果を見ても、エネルギー会社だけでなく、住民や企業といった消費者による参加型ネットワーク構築の重要性が認識されており、今後はエネルギーの供給者と消費者との間をとりもつサービスプロバイダが重要な役割を担うだろうこと、さらにエネルギー以外の業界からもサービスプロバイダが発生するだろうことが予測できる。
現在、デマンドサイドマネジメントにおいて最も注目を浴びつつあるのが、BEMS/HEM(Home Energy Management System/Building Energy Management Systems)である。エネルギー消費の見える化を進めつつ、誰がどこでどんなふうにエネルギーを使っているかなど、データを集めて分析し、様々な機器やサービスと連携させて、エネルギーの需給バランスをコントロールすることができるからである。しかし、今後、これが社会的なインフラシステムとして有効に働くためには、導入数を増やす必要があり、それに向けて政府も導入補助の施策をとっている。
その一方で、現状のBEMS/HEMSは、1企業が全てのソリューションを作り上げる、いわゆる垂直統合型(囲込み方式)で進められているケースが多く、余分な事を自社が抱えることによるビジネスリスクが大きいほか、ビジネスのスピードも落ちて市場が広がらない、という問題点がある。また、各社の作った何十種類ものBEMS/HEMSが存在しているために、個別に導入しても管理体系が確立できない、という欠点もある。
これに対して、IBMでは、横のつながりによる事業パフォーマンスを重視した協調モデルを新たに提案している。オープンなシステム上でデータを統一的に収集蓄積し、役割分担の議論を深めながら共通機能を提供することで、幅広い業者が参画・連携でき、かつ、その後のビジネスの成長にも対応できるような枠組みづくりを進めている。また、このモデルであれば、BEMS/HEMSの導入メリットは、エネルギーの最適利用だけにとどまらず、顧客との接点を強化して様々にサービスの価値を高めることが可能となるため、将来的には世界を視野に入れた市場拡大も期待できるだろう。
(文責:藤井由紀子)