2012年5月17日木曜日

廃プラスチックのリサイクル技術(青島矢一)

2012年5月14日

昨年度の大河内記念生産賞を受賞した新日鐵の廃プラスチックリサイクル技術の講演を聞きました。3人の方が来てくださいました。Magiccと大河内賞ケース研究プロジェクトの共催です。

http://www.okochi.or.jp/hp/f02.html


プレゼンをしてくださった加藤さん

この技術は良い技術だと思いました。プラスチックは石炭と同じ成分を含んでいるのだから、コークス炉に同じように投入して熱分解して資源化してしまおうという発想です。石炭の代わりに、ゴミとして捨ててしまうはずの廃プラスチックを燃料とし、資源を作り出す。既存のコークス炉を流用するので、新規の投資を抑えることができる。


さらに塩ビに含まれる塩化水素(HCL)は石炭からでるアンモニアと反応して塩化アンモニウムとなり、無害化されてしまう。塩素があると応力腐食割れが問題となるのですが、それが、このプロセスでは必然的に石炭と組み合わさることによって、難なく解決されてしまいます。


素人ながらパズルのピースがピタッとはまるように美しさを感じる技術です。


エネルギー問題や環境問題を解決する上での鍵の1つは「既存資源をしゃぶりつくす」ことにあると思います。資源の多重利用の機会を発見することです。廃プラスチックの資源化技術のポイントは、コークス炉による熱分解プロセスが転用できたことです。既存技術を見直して、こうした多重利用の可能性を模索することが、(もちろん新エネルギーを開発することは必要ですが)、第一に追求すべき王道だと思います。


鉄鋼産業はエネルギーを大量に使い、CO2を大量に排出する産業として、批判の対象になることもあるのですが、省資源、省エネルギーには大変な努力をしてきた歴史があります。そうした努力の効果は、はやりの新エネルギーを導入する効果よりも、少なくともこれまでは圧倒的に高かったわけです。まだまだやれることはあると思いますし、期待したいです。


もう1つこの事例で重要であったことは、技術開発だけでなく、並行して制度的な働きかけをしてきたことです。この技術が事業化できたのは、容器包装リサイクル法におけるケミカルリサイクル技術としての認定を受けたことです(現在は、油化、ガス化、高炉還元剤、コークス炉法の、4つが認定されている)。


新日鉄が産廃業者になるのは社内的にも難しいでしょうが、この認定によって、資源を作り出す事業となり、社内でも認められたわけです。イノベーションが単なる革新的アイデアの創出ではないことを示す好例だと思います。


現在新日鐵のコークス炉をつかった再資源化は、回収された容器包装の30%を落札して引き受けています。それはケミカルリサイクル向けの64%を占めています。


これまでプラスチックゴミは燃えるゴミに入れるようにしてきました。東京都ではゴミが足りなく、また家庭ゴミには水分の多い生ゴミがあるため、石油で助燃しているという話を、以前青海のゴミ焼却炉で聞いたことがあったからです。高い石油を入れるくらいなら高カロリーのプラスチックを放り込んだ方がいい。埋められてしまうくらいなら焼却のための燃料にした方がいいと思ったからです。


しかし今回の話を聞いて少し考えが変わりました。プラスチック容器をきちんと分別すれば、それなりに経済的に再資源化できるということなら、きちんと分別したいと思います。今回の講演のビデオの中で、引き受けたキューブ状のプラスチック容器を、破砕して、あらためて手で分別して、鉄分を除去して、造粒するという前工程をみましたが、なるべき上流できちんと分別すれば、経済性も高まると思います。


こうした技術も、皆が社内のことを考えてきちんと分別を行うという、日本人の良さが支えているわけです。技術とともに、そうした日本人の行動も輸出したらいいと思います。

(青島矢一)