2015年1月29日 わいた温泉地熱発電所
わいた温泉の地熱発電所が稼働を始めたということであらためて見学にいきました。
はげの湯側からの概観 |
以前ブログで紹介しましたように、ここは、地元の人たちで構成される「わいた会」が事業主体となり、発電所の建設から運営までの全てを中央電力が受託し、売電による利益を地元に還元するという、地域共生型の地熱開発モデルとして注目してきました。
しかし前回訪問したときには、噴気試験では出ていた蒸気が止まってしまい、発電ができない状態になっていました。その後、井戸の増掘申請を行い、地下500mまでしか認可されていなかった掘削が800mまで許可され、実際には、650mまで掘ったところで、めでたく蒸気がでてきて、現状では1MW程度で試験運転をしています。
噴気する井戸 |
発電所建屋 |
増掘した井戸からは蒸気で30t、温水で50tが噴出しており、このままであれば、2MWのタービンを回しても、まだ熱が余ることになります。当初の井戸では1MWが精一杯で、将来的にもう1本井戸を掘る計画となっていましたので、今回は良かったと思います。
地元の人たちも安心したようです。
タービン小屋の中に入りました。東芝製の2MWのタービンです。技術的には火力発電用のものを転用しているとのことで、計画よりも少し大きくなったそうです。
タービン |
前回みたときよりは配管まわりはずんぶんとすっきりしていました。前回は配管をくぐらないと前に進めませんでした。メンテのことを考えて変更したのではないかと思います。
この発電所の1つの特徴は、発電を終えた蒸気を、間接的に水と熱交換して復水した上で、基本的には全て川に戻していることです。そうして蒸気として大気に放出することを最小限にとどめています。
この考え方は以前、地熱の中でバイナリー方式だけが新エネ対象になっていたときに、フラッシュ方式であってもバイナリー方式に近い再生可能性を確保しようと考えて開発されたものだと、以前、聞きました。
復水器 |
この発電所のもう1つの特徴は、所内電力が小さいことです。およそ7−8%だということです。ポンプ類をなるべくなくして、うまく循環させる工夫がなされています。同じような小型のフラッシュを採用している九重観光ホテルの地熱発電所では、30%以上が所内電力に使われるということでしたので、それからすると、ずいぶんと効率が良い発電所です。
冷却塔用ポンプ |
経済性ははっきりとはわかりませんが、これまで少しずつ聞いたことから推察するに、初期投資は、12−13億円くらいではないかと思います。2MWの出力で90%稼働するとすれば、所内電力差し引いても、売電単価が40円/kWhですので、年間の売電額は6億円近くになります。金利やランニングコストを考えても、順調に運転すれば、5-6年で回収できるかもしれません。
地元のわいた会には、月に1000万円、年間で1億2000万円ほどが還元される計画です。この内、半分は村の将来のために積み立てて、残りが地元メンバーの人々に配当金として分配されるようです。このお金をどう使って地域を活性化させるかが重要です。
細かい経済性は今後調べたいと思いますが、このくらいの地熱発電所が実現できるのであれば、将来性は十分にあります。市場がでてくれば、設備の初期投資はもう少し抑えられるでしょうし、FITなしでも成り立つ可能性が高いです。
ただし資源リスクはあります。今回も増掘してやっと噴気に成功しました。それも、事前には不安だったために、近くにもう1本掘削許可を得て、実際に現在、掘削作業をしています。そちらはまだ蒸気がでていません。1200mまでは掘ってみるそうです。
代替井戸の掘削 |
またわいた温泉では、千葉の京葉プラントがこれまで2度掘削をしていますが、1度目はうまくいきませんでした。今回2度目の噴気試験ということで現場にいって見ましたが、撤去作業をしていましたので、噴気しなかったようです。
このリスクが地熱開発にはつきものです。事業者を増やすには、小型に関しても、事例を蓄積して、掘削の成功確率を上げないとなりません。