2017年3月13日
1年半ぶりに中国の無錫に来ました。太陽光発電産業のラップアップ調査です。
初日の午前はサンテックパワーを訪問しました。順風に買収されて一時の危機は乗り越え、事業は安定しているようですが、本社ビルの中は、以前のような活気はありません。最初にサンテックを訪問したのは2003年のことで、僕がまだ太陽電池産業の研究をしてなかった頃、サンテックもバラックのような場所で事業を始めたばかりの小さな会社でした。それが2010年には世界一の太陽電池メーカーとなり、その後、ジェットコースターのように一気に経営が悪化し、米国の株主から訴訟を起こされ、順風に買収され、創業者は離れ、現在の状況にいたります。無錫の太陽電池産業全体がこんな感じでダイナミックに変化しています。
2012年に訪問し、数年前の無錫PV-EXPOのメインスポンサーとして華やかに壇上に立っていたWestechの社長も、米国投資と太陽熱事業の縮小で負債を抱え、昨年、会社を手放し、貿易会社に戻ったと聞きました。何度かメールでやりとりしたので残念です。
現在サンテックの生産数量は月産150MW。以前は政府との合弁含めて4工場ありましたが、現在はセル工場とモジュール工場合わせて2工場で生産しています。生産量では中国で10位に入るか入らないかくらいですので、中堅企業といったところです。拡大投資は難しく、古い設備を改良しつつ、生産しています。
とはいえ、中国の太陽電池産業を作り上げた企業ですから技術力はあります。多結晶セルの変換効率は18.4%、単結晶の高効率タイプでは21.0%の変換効率を実現しています。以前は物理限界と言われたレベルに到達しています。今でもオーストラリアのニューサウスウェールズ大学や江南大学との提携は継続しており、その他、中国の大学や公立研究所ともやりとりがあります。新技術の探索は進めており、コストよりは製品ラインナップや品質で勝負しているといいます。
従業員は3,000名で、現場の作業者は2,600名、研究開発人員は50名です。中国での賃金は今も上昇傾向にあり(それ以上に不動産価格が上がっていてみんな困っていました)、現場の作業者で月5,000元から6,000元(8万円から11万円くらい)です。材料や設備コストが大きいとはいえ、労働賃金の上昇はコスト低下の妨げになっていると思われます。現場労働者の流動性は高い一方で、技術者は定着しているとのことです。
モジュールの価格は多結晶で2.95元/w、単結晶で3.1元/wということでした。他企業と同じで、ほぼ相場が決まっているようです。Jinkoソーラーは価格競争力が高く、多結晶で2.6元/w程度です。
EPC価格の60%がモジュール価格だということでしたので、5元/wから6元/wくらいで太陽光発電所ができる計算となります。日本の日照条件で考えれば、0.4 元/kwh(7−8円/kwh)くらいが発電コストで、中国での国家の買取価格は0.85元/wですので、十分に採算にのります。ただし後述するように、国による買取の支払いが遅れており、民間の発電事業者は資金難に陥っています。